SSブログ

「乱歩の恋文」バックステージノート-細部に宿る魂 [てがみ座「乱歩の恋文」]

こんにちは!もう2月。なんだね。暦の上では春、なんだね。
冬を駆け抜けて、気がついたら今になってた。
風邪などひいていませんか?温かくしてお過ごしくださいね。

ブログ、ずっと書けなくてごめんなさい。
怒濤の日々からもう一週間が経とうとしている。あっという間すぎて、びっくりする……

本当に遅くなりましたが、
シアタートラム版「乱歩の恋文」、無事に閉幕いたしました。
ご観劇頂いた皆さま、ありがとうございました…!

普段は公演が終ると、倒れてしまうのだけれど
今は、「これからが肝心だ」との思いがいっぱいで
なんだか倒れるどころではありません。
あまり、ポカン……と腑抜けになれる心境でもないの。
ただ、一緒に過ごした人たちと、急に会わなくなったこと、
それぞれの日常に帰ること、
それだけが不思議な気がしてなりません。
離れていながら、ことばにできない想いで繋がっている、そんな感覚。

何から振り返ればいいのか……
バックステージの裏話も含めて書いていこうと思います。

今回のこの舞台、私たちにとってはものすごく大きな挑戦となりました。
シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.4の公募枠で上演して頂いた作品でした。

「乱歩の恋文」初演が2010年11月の王子小劇場。てがみ座 第3回公演でした。
その時の手応え、座組の一体感、「もっと大きな空間で上演したい」という夢。
初演に関わった全員が、この作品の再演の可能性を心の中に抱いていた。
私も、この作品は近いうちに再演ができるのではないかという予感を抱いていて、
出会ったのが「シアタートラム・ネクストジェネレーション」の企画でした。

46分の1、というたいへんな倍率の中から選んでいただきましたことに、
本当に感謝いたします。
ちょうど、渋谷の駅のホームに降り立った瞬間に、「決まりました」と劇場からの電話をいただいて。
そぐにその場で演出の扇田拓也さんに電話しました。
渋谷駅のホームの雑踏が消え失せて、思わず涙ぐんでしまった、あの瞬間のこと。
今でもよく覚えています。

それから、再演に向けて動き出した日々。
初演に関わっていた全員が、心の中で『来たか!』と呟いたに違いない。
全員が心の中で抱いていた予感が、現実に変わった瞬間。
初演と同じく、てがみ座にとっての最強スタッフの皆さんが勢揃いしてくださいました!

演出       扇田拓也(ヒンドゥー五千回)
舞台監督    杣谷昌洋
舞台監督助手 森山香織梨
舞台美術    杉山 至+鴉屋
照明       千田 実(CHIDA OFFICE)
音響       余田崇徳
衣装       吉田健太郎(yu- GEN CRaFTS)
方言指導(伊勢弁)  井上央子
宣伝美術写真 伊藤雅章
美術オブジェ  大野洋平(乱歩デスクライト「二顔灯」、ロビーオブジェ)

それに、この再演から加わってくださった新たなスタッフ陣!

演出部      宮本翔太(椿組)・箱田暁史・今泉舞(てがみ座)・扇田森也
方言指導(大阪弁)  奈良谷優希(まじんプロジェクト)
宣伝美術    山下浩介

強い信頼感で結ばれた座組は、本当に心地良い。
全員がそれぞれのクリエイティブを思う存分に発揮しあえる。
今居る場所から、少し無理してでも、一歩でも二歩でも前に進む。
こんなスタッフの方々に支えられて、今回の舞台が動き出しました。

最初のスタッフ打ち合わせの時間も、とっても面白かった。
王子小劇場で初演したこの作品を、どうやってトラムで上演するか?
打ち合わせに向かう間、私の頭の中には「シビアな予算の中でどうすれば」という思いが渦巻いて
うーん、どうしようか……とひとりで悩んでいたのだけれど、
扇田さん、杉山さん、千田さんと顔を合わせた瞬間に、そんなもの吹き飛んでしまった。
全員が、「初演でやったことを何一つ欠かさず、すべてをよりパワーアップさせる方向で!」
言葉を交わすより早く、ためらいもなく、一致団結していたのです。
もちろん私も。素直な心で。
最初っからやりたいのです、お金のことは置いておいて。
元がそうなのだから、打ち合わせが始まった途端にぞくぞくして。
それならば難しい挑戦でも集客を頑張ろう!と腹を括りました。
そこからはもう舞台の方針は揺るぎなく、お金がない部分は工夫を詰め込んで進み始めました。

俳優陣の方では、再演では、初演の神保良介さんから宮沢大地さんに変わりましたが
それ以外の方々は、すべて初演と同じメンバーです。
それから新たに、演出部として加わった、翔太くん・箱田くん・舞ちゃん。
劇場の稽古場をお借りして、稽古に集中する日々を過ごすことができました。
初演で一度完成形まで持っていっているのだから、と思いきや
そこから先へ行く挑戦、これは一筋縄ではいきません。
今回はたっぷりと稽古期間があるにも関わらず
一瞬たりとも弛む暇がなかったです。焦ってさえ、いたかもしれない。
演出の扇田拓也さんの眼差しがより一層、深く。大胆に。繊細に。
無数にある表現の中から「真実」が宿る瞬間を探し求めてくださいました。
稽古の日々の興奮を、心に焼き付けておきたい。
様々なルートや稽古を試しながら、トレッキングのように上昇を続けた日々。

今回は、てがみ座の尾﨑宇内・劇団桟敷童子の稲葉能敬さんが外部公演出演中のため
稽古の合流時期が少し遅めでした。
その間は、翔太くんが稲葉さんの、箱田くんが宇内くんの、
それぞれスタンドインとして代役を務めてくださった。
台詞も動きも完全に自分のものとして。稽古を重ねて。
彼らの存在があったからこそ、相手役の女性陣もしっかり稽古を積むことができ
全体の意識も一層引き上げられました。

さらに2012年の幕開けは、舞台美術作りから!
キャストさんたちも舞台美術を一緒に作ってくださいました。
若手男性陣を中心に、舞台美術研究工房六尺堂へ。(本当にありがとうございます!)
女性陣は稽古場で、幕を縫う。提灯を作る。
そう、あの上空を覆っていた提灯も、全部私たちが作った物なんです。
風船を膨らませて、千切った和紙を障子糊で貼っていって、色をつけ、風船を割り……
全部で23個!稽古場も工房と化してました。
みんなで小道具を探して集め、中には世田谷ボロ市に出かけていった面々も。
扇田さんの舞台への徹底した眼差しに貫かれて、演技もスタッフワークも、
ともかくも細部まで魂を宿らせる。

ご紹介します。
「細部に宿る魂」の数々をご覧ください!

P1000401.jpg
若手男性陣を中心に作っていった「阿片窟」ワゴン。裏側が「博文館」デスクになっています。
見て!この手すりの部品に至るまで。
P1000400.jpg
おお!手作り!!

小道具のこだわりの一例を。
ご観劇頂いた方にはお馴染み深い「一柳斎先生」こと金原直史さん。
_DSC0580.jpg
彼はもう全身小道具のオンパレードでした。錫杖も実はとても重かったのです!
P1000395.jpg
首から掛けている、なにやらよく分からないものの数々……。人形、首がありませんよ・・・。
P1000397.jpg
錫杖には仮面がついていました。いろいろと。
P1000403.jpg
彼が背負っている籠には全面に「偽瓦版」が貼られていました。
この偽瓦版を作ったのは箱田暁史くん。
P1000405.jpg
こっちには「人魚」の偽瓦版もありますね。

博文館のデスクにも、いろいろと小道具満載ですね。
P1000384.jpg
意外と勉強家ですな……。
(このあたりの本は、ボロ市購入のものもありますよ!)

稼働式の舞台美術には目には見えない工夫もいっぱい!
乱歩さんの文机や博文館のストッパーなど、
見えない部分で創意工夫を発揮してくれた宮本翔太くん。
軽い力でしっかり止まる、稼働もスムーズな優れものなんです。
P1000399.jpg
これ、俺グッジョブ!の笑顔。
1回ごとに破れる襖も、彼が貼ってくれてました。
(襖の絵は、彼と今泉舞ちゃんが描いていたのですよ!)

稽古場にはお着物もズラリ。
P1000398.jpg
早替え多発で、皆さんものすごく手早くなりました。
写真が撮れなかったんだけれど、数々の仮面もご紹介したかった!
客席で前の方の方々は見えていたと思うのだけれど、
阿片窟のシーン、群衆がつけていた、たくさんの仮面。
面白くて怖くて、ぞっとするシーンでしたね……

P1000427.jpg
幕の仕掛けを入念にチェックしてくださった森山香織梨さん。
毎回プリセットが大変なんです。
P1000456.jpg
途中参戦してくださった扇田森也さん。ご自身も、新国立劇場の養成所を出られた俳優さんです。
森の妖精と異名を取る彼。ほんとにもう、いつだってこの笑顔!

P1000459.jpg
建造物のような舞台が組み上がって……
P1000483.jpg
努力の結晶 提灯も、電柱も上空に浮かびました!

P1000461.jpg
女子楽屋の皆さんも準備万端のようですね。お菓子食べてるようですが。
この方達、カメラ向けた途端に即刻このポージングですよ。
(境宏子さん・西田夏奈子さん・和田真季乃さん・福田温子さん・今泉舞さん)

そうして、舞台に光が入り……
P1000487.jpg
本番の時を迎えました。

****************************
撮影/伊藤雅章
(すべての舞台写真、禁 無断転載)

_DSC0432.jpg
1場「江戸川乱歩の死」  岡野暢

_DSC0451.jpg
1場「江戸川乱歩の死」  西田夏奈子・宮沢大地

_DSC0476.jpg
3場「紅座」  西田夏奈子・中村シユン

_DSC0498.jpg
4場「白昼夢-隆子と隆-」  西田夏奈子・和田真季乃

_DSC0587.jpg
5場「質草」  和田真季乃・福田温子・石井統・宮沢大地・金原直史

_DSC0627.jpg
5場「質草」  稲葉能敬・和田真季乃

_DSC0662.jpg
5場「質草」  和田真季乃・稲葉能敬

_DSC0681.jpg
6場「二銭銅貨」  福田温子・尾﨑宇内

_DSC0710.jpg
6場「二銭銅貨」  中村シユン・西田夏奈子・岡野暢 

_DSC0750.jpg
7場「残照の帝都」
ALL CAST(岡野暢・西田夏奈子・稲葉能敬・和田真季乃・中村シユン・宮沢大地・石井統
金原直史・福田温子・尾﨑宇内・久我真希人・境宏子・宮本翔太・箱田暁史・今泉舞)

_DSC0893.jpg
9場「代作」  尾﨑宇内・久我真希人

_DSC0902.jpg
9場「代作」  稲葉能敬・尾﨑宇内

_DSC0949.jpg
9場「代作」  稲葉能敬・岡野暢

_DSC0993.jpg
10場「悪夢」  境宏子・岡野暢

_DSC1045.jpg
10場「悪夢」  岡野暢

_DSC1068.jpg
11場「傀儡師」  境宏子・西田夏奈子

_DSC1074.jpg
12場「灯火」  西田夏奈子・岡野暢

_DSC1110.jpg
12場「灯火」  西田夏奈子・岡野暢・ALL CAST

_DSC1153.jpg
13場「白昼夢-手紙-」  和田真季乃・中村シユン・西田夏奈子

_DSC1205.jpg
13場「白昼夢-手紙-」  西田夏奈子・和田真季乃

****************************
・シアタートラム版「乱歩の恋文」DVD 予約受注(2月~3月お届け) 2,500円
・シアタートラム版「乱歩の恋文」戯曲 1,000円
てがみ座HPにて販売いたしております!
コンタクトよりお申し込みください。info☆tegamiza.net(☆を@に変えてください)
****************************

本当に嬉しいことに、
全6ステージ1,363人ものお客さまにご覧頂くことができました。
シアタートラムを埋めるお客さまを見たときには胸が一杯になりました。
心から感謝いたします……

たくさんの方々に支えられた公演でした。 本当にありがとうございました!

旗揚げから三年目、劇団が少しずつ大きくなって育っていきます。
それでも、こうして真摯に創ること、それだけが私たちの魂だって思います。
どんなに大きな劇場で上演するようになっても、それだけは喪わない。
それが、私が創りたい演劇なのだから。
これからは、てがみ座はまた次の新作公演に向けて動き出します。
創り手の情熱が通い、観てくださる方の心に響き、作品に魂の宿るものを。ずっと。
大変に難しいけれど、これほど挑戦しがいのあることも、他にないもの。
夢中で、やっていこうと思います!

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

P1000497.jpg
シアタートラム版「乱歩の恋文」
ALL CAST&STAFF

[後列] 左→右
mico.(制作)・小野和佳子(制作)・吉田健太郎(衣装)・杣谷昌洋(舞台監督)・
藤田昌久(劇場てがみ座担当)・石井統・扇田森也・余田崇徳(音響)
[中列]
金原直史・尾﨑宇内・宮本翔太・箱田暁史・千田実(照明)
今泉舞・稲葉能敬・岡野暢・宮沢大地・久我真希人
[前列]
扇田拓也(演出)・境宏子・和田真季乃・長田育恵(作)・中村シユン・森山香織梨(舞監助手)・福田温子

(あっ。西田さんがいないよう。これ、西田さんが撮ってくれた写真なんだ。
西田さん。西田さん。どっかにいないかなぁ)

_DSC0460.jpg
いたいた。西田夏奈子さん!よっ、我らが座長っ!




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。