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てがみ座は、いま。 [てがみ座「線のほとりに舞う花を」]

てがみ座は、いま、稽古をしています。
4月12日から始まる公演に向けて。

舞台を上演するかどうか。
今、この日本中のすべての劇団が悩み続け、苦渋の選択をしています。
きっと、その選択のどれもが正しいのだと思っています。

私たちは、稽古をしています。
座組のメンバーが停電や終日運休などに遭い、
集まれることさえ既にひとつのハードルとなっていながら。
それが、どういうことなのか。

芸術の力で人を救う。それはその通りだと思います。
芸術は心を救える。希望になる。
だけど、それを唱えることができるのは
まだ今じゃない、と個人的には感じています。
生きるか死ぬかの瀬戸際にいるときには、芸術なんて言ってる場合ではない。
まず生きること。生きられること。
命が保証されること。
その地点に立って、ようやく人は次なるもの、心の豊かさに目を向けることができる。
もう少し状況が落ち着いて、社会が復興に向けて動き出したその時、
人が明日のことを考えられるようになった時、
芸術は、人間が持ち得る限り、最も自由で大きな翼になる。
そう信じています。

だけど私たちは稽古をしています。
今回の舞台は、生きること、生き抜くこと、それこそが中心となった物語で
稽古を通して私たちは、ふつうに日常を生きているよりも切実に
生きることの大切さ、誰かとほんの少しでもつながりあえることの奇跡、
大きな災いの恐怖、そして人と人との争いの無益さを、感じています。
私たちにとって、今、この稽古という行動が
大切なことを感じ、考え抜いていくための深い考察の時間となっている気がしています。

舞台を創り上げるスタッフ陣も、同じ気持ちでいます。
突如、大規模停電が決行されるかもと発表があった夜には、
ちょうど舞台の打ち合わせを予定していました。
停電に備えて、スタッフの方々は自転車でいらしていた。
私たちは、会ってから、状況的なタイムリミットとなる45分間で
すぐに方針を固め、散会しました。
舞台美術の杉山至さんからは、今回の舞台では、木材の買い占めにはならないよう、
新しく木材などの材料を購入することはせずに、
すべて既にあるもので創り上げることをご提案いただきました。
また、照明の千田さんからも、メールで
いかに少ない照明で上演するか、その命題に取り組むメッセージをいただきました。

今だからこそ、生きていくことに真摯に向かい合いたい。
そのシンプルな思い、ただ一点で、私たちは稽古場に集まっているように思います。
スタッフの方々も、稽古場と同じ方向を向きながら、
今この状況下で上演するということがどういうことか、真剣に考えています。

自分たちが創る物が芸術で、それにより何かを変えられる、
そんなことはとても考えてはいません。
ただ、こうした作品を上演しようとしていた矢先に、「今」というこの状況が加わったことで、
私たちの中でなにかが切実に、研ぎ澄まされていった気がします。

生きることの尊さ。

いまの私たちは、「稽古」という行為を通して、
それを見つめているのかもしれません。


公演は、いまのところ、上演する予定でいます。
王子小劇場の劇場スタッフの方々ともよく話し合いながら考えていきます。
もちろんお客さまの安全を第一に考え、
今後の状況次第では、別の決定を下すこともあるかもしれません。

今のこの状況下で観劇にいくことを躊躇される方もたくさんいらっしゃることと思います。
けれど、もしよかったら、お越しいただきたいのです。

人の生の営みを見つめること。
人間を愛すること。
想像力を持つこと。
それが、演劇をするということ。

そんなことを考えながら、私たちは稽古をしています。
心の灯を絶やさずに。

美しいハーモニーの音楽とともに。




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