SSブログ

約束 [日々雑感]

今夜連絡があって、
私にとってまた一人……
大切な方がお亡くなりになったとのこと。

大学を卒業してから今まで、2回転職をしていて、
出版社→劇場運営→演劇博物館と来ているのだけれど、
最初に勤めた出版社で出会った方。
活版印刷の時代から長く出版界に身を置いて、
常に第一線を走り続けてきた
とても気骨のある、昔気質の、根っからの出版人です。
厳しくて、大胆で、豪腕で、でもすごく温かい方だった。

あの時も私は、
その頃はまだミュージカルを書いていたけれど、
初めての博品館劇場書き下ろしが無事に終わって
このまま舞台脚本を書いて身を立てていきたくて、
そのために少しでも劇場や舞台の傍に身を置いていたいと
出版社を辞めることにした。

反対もたくさんされて
それでもどうしても書きたい思い、舞台の傍にいたい想いが強くて、
そんな私にその方は言ってくれた。
「お前、辞めるからにはしっかりやれ。
俺も昔は小説家志望だった。俺もいつかは本を書く。」

今月下旬、初めて戯曲が活字になる。
活字になったら、やっとお届け出来ると、そう思っていたのに。

学生の頃から早稲田文学で働いて、
その後も活版印刷の時代を引き継いだ出版社で
活版の職人さんだった方たちも居る中で親しく働いて
活字の匂いがする場所に長く身を置いてきたから
「活字になる」ことが、自分にとってはすごく特別なことで
ひとつの大きな目標だったのだ。

ようやくお届けできます。
そう思っていたのに。

うじうじしてたら、心の中できっとその方に怒られてしまう。嵐のような激しさで。
熱い眼差しで。

俺は精一杯生きた。
お前はどうなんだ、と。

こうやって、心の中に約束が増えていくんだ。





nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。