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江戸川乱歩をめぐる旅 坂手島編「隆を育んだ景色」 [てがみ座「乱歩の恋文」]

毎日ぎゅんぎゅん過ぎていきます-!
月曜日に、グローブ座に出てたマキノちゃんが合流!待ってたよ!
くっきりと輪郭が立ち上がっていく、じわりと心が動いていく。
稽古場でも気がつくと深く見入っている感じ。

この行方、本当に楽しみ!
昨夜、制作女子チームで集まってDM作業会。リラックスして楽しかったなー!
皆さんのお手元にもうすぐDMが届きます。
今回もチラシがとても素敵なので、クリア封筒にしました。

さて、江戸川乱歩をめぐる旅、坂手島編へ。
乱歩の妻、村山隆(りう)は、明治30年6月15日生まれ。
三重県の坂手島に生まれました。
どうやって平井太郎(のちの乱歩)と出会ったのかは、舞台を楽しみにしていただくとして、
隆が生まれた坂手島の景色を、どうしても観ておきたかったの。

坂手島は鳥羽からすぐ。鳥羽市営定期船で行けます。すぐ着いてしまうの。10分くらい。
この市営定期船は、この鳥羽離島群を結んでいて、
坂手島・答志・桃取・菅島・神島へいくことができます。
神島は、「潮騒」の舞台となったことで有名。

坂手島はとても小さい島。鳥羽市街の対岸に浮かんでいます。

DSCN1484.jpg

定期船が着く船着き場には小さな漁船もたくさん並び、
時間がゆっくりと……ゆっくりと流れています。
島には海沿いの道だけが平坦な部分。
あとは急な階段や細い路地が網の目のように走っています。

DSCN1502.jpg

山の斜面沿いに小さな家が建ち並ぶの。
家々はどこも、パステルやブルーや美しい壁の色をしていて、いつからこの色なのかは分らない。
けれど、船が帰ってきたときに、遠くからでも自分の家が見つけられるのかもしれない、
島をにぎやかに彩るのかもしれない、なんてことを思いました。

DSCN1526.jpg


隆の家は、ずっと島で唯一の商店だったの。
「村万商店」。そこに行ってみようと思ったんだ。
村万商店は、本当に島の中心地にあって
細い路地の奥、ふいにぽっかりひらいた広場のような交差場所に建っていました。
でも、営業は二年前までだったそう。
今は村万商店の代わりに、お向かいに別な雑貨屋さんが営業しています。

今は、もう雨戸も閉まっている、村万商店。ピンク色の壁が鮮やか。

DSCN1527.jpg

二年前までの営業だったんだ。
残念……と思っていたら。
まるで、奇蹟のような出会いが訪れたんだ。


閉まっていたお店の前で、ほんの数分たたずんでいたら
お向かいの雑貨店から出てきたおじいさんが、
ここのお店を二年前まで営業してた管理人がすぐ近くにいると連れてってくれました。

お店の管理をしていたのは、隆の親戚のおじいさん。
「隆さんが育った場所を見てみたいと思って来たんです」とお話ししたら、
ちょうど二日前にTVの取材が来ておうちの中を整頓したばかりだから入れてあげるよ、と……

隆が生まれ育った実家の、二階のお座敷で
親戚のおじいさんから、たくさんのお話を聞くことができたんです。

本当に、なんということでしょう。
古いアルバムに残った、隆の写真。
乱歩たち家族の写真。
「たくさんの出版社が本を出すために、このアルバムから写真を写していった」
その元となるアルバムがここにあるの。
涙がじわりと込み上げてきました。
写真、撮っていいよ、と言ってくださいました。
あまりのことに……もう、声もなくアルバムを見つめ続けていました。

DSCN1517.jpg

村の小学校で先生をしていたころの隆。
まだ少女のようで初々しくて。あどけなくて、それでも理知的で。

「お隆さん、会いに来ました。あのなたの物語を書きたいんです」

胸がいっぱいになりながら、そんな風に心の中で語りかけていました。

乱歩からの書簡も随分あって。
このお家に宛てて乱歩が出した手紙。
息子の隆太郎くんが出征してしまうというお知らせの手紙。
そこには、作家ではなく、父親の顔があって。
文字の向こうにしかいなかった乱歩が、
こちら側へ歩み寄ってきてくれた瞬間でした……。

おじいさんと随分話し込んだ気がする。

幼い頃の話や、隆のエピソードや。
どんどん、胸の中に懐かしさが溢れてきたの。
隆や乱歩が近しい存在になっていくのを感じてた。
まるで私自身の親戚のように。

その夜、坂手島に一泊して、宿で私も「手紙」を書いたの。
これが私の旅の宿題だったんだ。
私が書いたお隆さんへの手紙。

西田夏奈子さんがご出演していたFUKAIPRODUCE羽衣「愛死に」公演限定で配った
折込みの仮チラシを見かけた方はいらっしゃいますでしょうか。

チラシデザインの杉江あきさんから、
仮チラシのプランで「手紙」を載せたらどう?というアイディアをいただいていて
島から書くね、と約束していたの。
高い波の音を聞きながら、書いたのです。


仮チラシにした、その手紙。

c-green.jpg

こうして、ここから物語への最初の一歩を踏み出したのです。
奇蹟のような出会いに、胸一杯の感謝を抱きながら。


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